愛するが故にモンスターと成り果てる

居場所が欲しかっただけだった

ピザボーイ 史上最凶のご注文を題材にしたのは全米を揺るがしたショッキングな事件がモデルとなっています。その内容を見たとき、流石に筆者もよくここまでコメディタッチに出来たものだと苦笑してしまった。こういうところが日本とアメリカ、映像作品にする際のやり方が異なっている点と言える。豪快といえば豪快だが、例えば日本で何人と殺害した秋葉原通り魔殺人事件などを題材に、コメディ作品として映画を作ろう、なんて言えばそれこそ映像化どころの話ではないはずだ。内容が内容だけに慎重に扱わなくてはならない、するにしてもベースとなる事件を忠実に再現するように、容疑者の苦悩とどうしてそんな行為をしなければならなかったのか、などといった部分を掘り下げて考えなくてはならない。

映画づくりでもここまでの差があることに驚かされますが、アメリカ映画で実話をベースとした作品はまだまだある。その1つとして、『モンスター』という2003年に制作された作品があります。こちらの作品もまた実際にあった事件がベースとなっているが、劇中で特に話題を読んだのは作品の主演を務めたシャーリーズ・セロンの迫真性ある演技が大変評価された事も大きい。この作品で彼女の女優人生に、また違った色をもたせられたと言われるほどの名作といわれ、笑えないながらも事実として苦しんでいる人がいる現実を見せる作品だと言われるほどだ。

映画を制作するにあたって、共感を呼び込めるような内容になっているのも見物となっています。

実話の映画

映画概要

この作品のモデルとなったのは1989年に逮捕されたアメリカで10番目の女性死刑囚となった『アイリーン・ウォーノス』という女性を題材にした作品となっている。一見すると残忍なほど複数人の男性を殺害した犯人、という印象になるでしょう。実際、筆者も詳細を知るまではこの女性の鬼畜といえる行いをどうしてここまで平然と行えたのか、その点がどうしても理解できずにいた。そこから調べていくと見えてきたのは、アイリーンという女性が生きるためにしなければいけなかったこと、そうしなければ自分が生きられなかったことなど、荒んだ生活像が出てくるのです。

映画の内容はそんなアイリーンの半生を描いた作品となっており、彼女がどうしてここまで落ちた殺人鬼にならなければならなかったのか、そして彼女が当時心を許せる相手はたった1人の女性しかいなかったなど、誰からも救いの手を差し伸べられない嘆きが詰め込まれている。

あらすじ

娼婦として過酷な日常を生きていたアイリーンだったが、もはや現状を生きるだけの気力を失った彼女は自殺することを決意する。その前にお酒を飲もうと立ち寄ってみると、そこでは彼女の人生を揺るがす運命的な出会いが待っていた。24歳という若さで親から同性愛の嗜好を治療してくるように命じられたセルビーという女性だった。共に社会から阻害されて生きてきた、そんな親近感からアイリーンとセルビーは互いに惹かれ合うように恋仲となり、一緒に暮らしていこうと夢見るようになった。

そのための資金を稼ごうとしたアイリーンだったが、男性に暴力を振るわれた弾みで射殺し、そこからはセルビーを伴だった逃避行を開始する。殺した相手から金を盗み、その場しのぎの生活を続けていたものの、やがて限界を迎えようとしていた。

なんとか堅気の仕事に就こうと努力するアイリーンだったが、まともな仕事についたことのなかった彼女を雇おうと言う物好きは何処を探しても見つからない。娼婦としても年齢的な限界だったため、やはり男を殺して金品を奪うだけしかないと結論に行き着く。しかし同じような犯行が行われたことでアイリーンとセルビーは遂に指名手配されてしまうのだった。

捕まるのは時間の問題、関係のないセルビーを逃がすためにアイリーンは彼女を故郷へと返し、その後逮捕されてしまう。これまでの罪も合わせて死刑という判決を下されたアイリーンはひたすらに、その時を待ち続けたという。

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抜けだそうとした

1989年に発覚したこの事件、アイリーンという血塗れの殺人鬼が逮捕されたこと、そして彼女がどれほど残忍で凶暴な存在だったのかと当時のマスコミはもてはやしたであろう。寸分違わぬ事実で語られたアイリーンという犯罪者の半生は、確かに許されるものではありません。しかしこの女性がその生涯をどのように過ごしてきたのか、そして社会という枠の中で常識・普通といった中に当てはまれず、周りの都合によって自分を押し殺した生活を余儀なくされた人の嘆きを知っているだろうか。アイリーン・ウォーノスという女性はまさにその典型的とも言える存在なのです。

ちなみに

シャーリーズ・セロンの出世作でもあるが、この作品は当時公開された作品の中でも話題を集めた問題作としても知られている一方で、非常に高く評価がされた。アイリーンと同じような生活をしなければならなかった、そんな女性達がかつていた事実が明らかになった。それこそアイリーンのように、家庭環境に恵まれなかったというだけで彼女の人生は全てが歯車が狂ったまま動き始めてしまったことを考えると、彼女が本当の意味で悪人かは判断しづらくなる。

やっぱりフィクションが好き